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じなん部屋
April / 23 Thu 14:03 ×
×

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August / 20 Wed 10:09 ×
そして・・・


ホースの先を潰して、園庭に水をまく。
そうすると、小さな虹ができる。

ユーリは笑った。
こうやって、虹をつくると子ども達が笑って喜んでくれるのだ。
ひまわりのような笑顔で。

カシャン
フェンスの鳴る音がして顔を上げると、見知った顔があった。

「こんにちは、先生」
「お!コンラッド!元気だったか」
「ええ。中に入ってもいいですか」
「ん、いいよ」

コンラッドは、門扉を押して中に入ってきた。

「昔も、よくこうして虹を作って見せてくれましたね」
「みんな、喜ぶからな」
びしょびしょになって、後が大変なんだけど。
ユーリは苦笑した。

近づいてきたコンラッドにユーリは、むーっと軽く眉間に皺を寄せる。

「なんだ?また、大きくなったか?」
「そうですね、5cmほどですが」
「なんだかなー。ついこの間まで、こーんなちっこかったのに」

こーんな、と言いつつユーリは親指と人差し指で10cmくらいの間を作ってみせる。

「いくら、俺でもそんなに小さくありません」
先生の腰くらいまではありましたよ。

コンラッドは爽やかな笑みを浮かべる。

ユーリの前に立つコンラッドは、もう、らいおん組のコンラッドではない。
大学受験を控えた、高校生だ。
背もいつのまにかユーリを追い越し、声も低く男らしくなった。

けれど、ユーリはコンラッドの記憶にある時とほとんど変わらない。
まるで、ユーリは年を取るのをやめてしまったかのようだ。

「受験、大変だなぁ・・・でも、コンラッドなら、どこでも余裕じゃないのか」
「それなりに大変です」
「どこ受けるの」

コンラッドの答えた学校名に、ユーリは目を見開く。

「え、どうして・・・コンラッドなら、もっと上、狙えるだろ?」

コンラッドは、首を振った。

「いいんです。俺の将来に一番いいと思った選択なんです」
「なにか、もうなりたい職業があるのか」
「ええ・・・先生と、同じ道を歩みたい、と」
「コンラッド・・・何、言って。そんなのもったいない!」

コンラッドはとても優秀だと、聞いている。
医者でも弁護士でも、本人の努力次第で輝かしい未来が、待っているのだ。

「医者も、弁護士も・・・興味ない」

ただ、あなたと同じ場所に立ちたい。
あなたと同じ景色を見て見たい。
子どもの頃からの、夢でした。

「だからって」
「それとも、先生は、自分の仕事を卑下なさるんですか」
「そんなことはない!そんな、ことはない。でも、その人には相応しい職業っていうのが、あって・・・コンラッドには、もっと違う道が」
「決めたんです。俺も、子ども達の笑顔に囲まれて過ごしたい」
「保育園の仕事ってのは、そんなに簡単な仕事じゃない」
「わかっています。どんな仕事だって、大変で、楽な仕事なんてない」
でも、やりたいと思った仕事なら、きっと頑張れるんじゃないですか。

薄茶の瞳がユーリを見る。
小さな銀を散らした不思議な虹彩。
子どもの頃から、変わらない綺麗な瞳。

コンラッドが自分で決めたことを簡単には覆さないことは、知っていた。

ユーリは溜息をついた。

「そこまで、言うなら・・・目指してみるといい・・・保育園の先生」
「待ってて、くれますか」
「待ってるよ。コンラッド先生」

ユーリは笑って、昔のように、コンラッドの頭をくしゃくしゃと撫でた。

きっと、背の高い、コンラッド先生が保育園の人気者になる日がくる。
その日が、今から、待ち遠しいと、ユーリは、思った。

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July / 22 Tue 10:51 ×
サラ、と風に揺れるダークブラウンの前髪。
スッと通った鼻筋。
薄い唇。
フレームレスの眼鏡。

派手ではないが、男前の部類に入るだろう。

メッセージボードを直すために屈めていた腰を伸ばし、にこりと笑う。
その笑顔は、なんとも爽やかで、同性なのに思わずどきっ、としてしまった。


「こんにちは、当院に御用ですか?」
耳に心地好い声。

「あ・・・っ・・・えっと、そうじゃなくて」

あなたの顔が見てみたかったんです、なんて言うわけにもいかず、ユーリは口篭った。

「よろしければ、見学でもしていきませんか?」
「へ?・・・ええと、そう、ですね」

ユーリは、頷き後頭部を掻いた。

「では、どうぞ」
「はい、えと・・・お邪魔します」

歯科医はにこ、と笑った。

「どうぞ、靴のままでいいですよ。こちらが受付です。そして、ここが治療室」
カチャと、ドアを開ける。

見学を!と言うくらいだから、一体どんな治療室なんだろう、と興味津々で入ってみると、
そこは、どこをどう見ても普通の治療室だった。

ユーリは、瞬きした。

「え、あれ?」
「どうかしましたか?」

「あっと、その・・・普通だな、と思って」
あはは・・・とユーリは不自然に笑った。

「そうですね、特に変わった風につくってません。どなたからか、変わった歯科医院だと聞いたんですか?」
「いや、そうじゃなくて。だって、表のメッセージボードに見学大歓迎とかって書いてあったから」

てっきり、変わった治療室なのかなって・・・そう思って。

「ああ、なるほど・・・いえ、そう言う意味で書いたんじゃないんです」

誰でも、どんなところでも、はじめての歯医者や病院って様子がわからなくて不安でしょう?
それなら、事前にどんな雰囲気の歯医者なのか見学してもらうのもいいかなと、ただそれだけの理由なんです。

「そっか、なるほど」
「それで、どうですか?うちは、安心して治療を受けれそうだと思ってもらえましたか」
「うん。おれ、歯医者さんって縁遠いからよくわかんないけど・・・清潔でいい感じ」
「ありがとうございます。しかし、歯医者と縁遠いことはいいことですね」

歯は大切にしないと。年をとっても自分の歯で食べ物を租借できるほうがいいんですよ。

「そうだよな!おれもそう思う」
「でも、油断したら駄目ですよ?そうだ、少しチェックしてあげましょうか」
「え、チェック?」

ユーリは自分より高い位置にある歯科医の顔を見上げた。

「そう。歯の健康診断です。もちろん、無料ですよ」
「でも、ただ見学のつもりだったのに」
「別に、いいですよ。普通の治療室ということで、なにやら、がっかりさせてしまったようですし」
「あ、いや・・・がっかりなんて、してないし!」
ぶんぶんと首を振るユーリに歯科医は小さく笑った。

「遠慮しないでいいですよ。今なら診察待ちのひともいないし」
そんな時間もかからないから。

「えっと・・・それじゃ、お願いします」
そう言われると特に断る理由もないので、頷くしかなかった。

「はい、どうぞ。それじゃ、こちらに座ってください」
「うん」

ユーリは、ゆったりした診察椅子に座った。

「はい、口を開けて」

ユーリは言われたとおり口を開けた。

「歯並びはいいですね。歯石もないし・・・ああ、でも少し気をつけたほうがいいかも」
「虫歯ある?」
「いえ、まだ虫歯にはなってない・・・でも、気をつけないと、なる可能性が」
「えー!やだ!虫歯なんかなりたくないよ」

がば、と身体を起こした少年に歯科医は笑いかけた。

「大丈夫、そんな心配しないで。ただ、いつもより丁寧に磨くことを心がけてください」
「うん」
「それにまぁ、もし虫歯になってしまったら、うちに来てもらえばいいですし」
「うわ、さりげなく商売?」
「まさか!虫歯で苦しむひとはひとりでも少ないほうがいい」
でも、うちの存在を心にとめておいてもらえたら、嬉しいですけどね。

そう言って、笑みを浮かべた。

「それじゃ、気をつけて」
「ありがとうございました」
「どういたしまして」

最後まで爽やかな笑顔の歯科医にユーリは好印象を持った。

「いい先生だったなー」

でも、自分はお世話になることはないだろうなぁと、思っていた。

―― その時までは。

July / 15 Tue 14:27 ×
せんせいとリボン


今朝、友達のヨザックの頭に真っ赤なリボンが付いていました。

「ヨザ、おまえおんなのこだったのか」
「やぁね、ぐりえ、って呼んで」
「は?」

ヨザックはくねくねと身体を動かします。
はっきり言って気持ち悪いです。

「だってー、あたしってば美人だからー、こういうのも似合うと思って」
よくよく見ると、ズボンではなくスカートをはいています。

ぞわぞわぞわ!
鳥肌が立ちました。

「みんなにも見せてこよーっと!」
「あ、おい!ヨザ!」
ヨザックは、らいおん組を飛び出て行ってしまいました。
そして、ヨザックが走っていったのは、なんとあひる組です!

コンラッドは慌てました。
ゆーりせんせいが、あんなのを見たら倒れてしまうのではないかと思ったからです。

「ヨザ、待て!」
急いで追いかけましたが、間に合わずヨザックはあひる組に入ってしまいました。

きゃー、という悲鳴が聞えました。
絶対にゆーりせんせいが倒れたのだと、思いました。

「ゆーりせんせい・・・っ」
ヨザックの後に続いてあひる組に飛び込むと、ヨザックが女の子たちに囲まれていました。

「あれ?コンラッド」
楽しそうに見ていたゆーりせんせいが、コンラッドに気づきました。

「あ、ゆーりせんせい」
「どうかした?」
「あ、あのヨザックが」
「ヨザックね。今日はぐりえちゃんって言うらしいね」
くすくす笑っています。

「きゃー!ヴォルちゃんかわいー」
「けんちゃんも!」
見ると、どこから取り出したのかヨザックがリボンを配って歩いています。

「ゆーりせんせ!」
ヨザックがゆーりせんせいの所にもやってきました。

「ん?なに?」
ゆーりせんせいがしゃがみました。

「ゆーりせんせにも、あげる!」
「え、おれにも?」
「はい!」
「あはは・・・ありがとう」
困ったようにゆーりせんせいは笑っていました。

でも、リボンをつけたゆーりせんせいは、他の誰よりもリボンが似合っていてかわいいとコンラッドは思いました。

April / 16 Wed 15:15 ×
夕食後のお茶を飲んでいると、ピリピリピリ、と携帯がなった。
おれのは、大好きな球団応援歌なので、コンラッドのだ。
というか、コンラッド・・・着信音も買ったときのまんまって・・・今時めずらしくないか?
そんなことを思っていると、コンラッドが「失礼します」と断って電話に出た。

「もしもし?」
お袋と二人で、黙って電話するコンラッドを見る。

「え・・・帰れない?そんな・・・え、ええ・・・それが、鍵を無くしてしまって、今、お隣の
渋谷さんのお家に・・・」

お袋が耳打ちしてきた。

「もしかして、お母様今日は戻って来られないのかしらね?」
「ん、なんかそんな感じだよな」

すると、コンラッドが困ったような顔でお袋に携帯を差し出してきた。

「すみません、母がお礼を言いたいと」
「あ、あら・・・はいはい。もしもし、お電話変わりました。ああ!いいんですのよ!」

お袋は立ち上がって、キッチンの方へ歩いていってしまった。
なので、コンラッドに話しかける。

「なぁ、お袋さんなんだって?」
「それが、仕事が忙しくて帰れないって」
「鍵をなくしたって言ったんだろ?」
コンラッドは頷いた。

「はい。そしたら母が今から母の会社に来て一緒のホテルに泊まれと言うので・・・」
たぶんそうなると思います。

「なんだよ、そんなホテルなんて勿体無いじゃん!うちに泊まればいいよ」
「でも夕飯もごちそうになって、その上泊まるなんて・・・」
コンラッドは申し訳なさそうに俯いてしまう。

「前はよく泊まったじゃん」
「前、って・・・それは小学生ぐらいまでです」
「いいじゃん、別に。きっとお袋だって、今、同じこと言ってると思うよ」

すると、キッチンの方から明るい声で話をしながらお袋が戻ってきた。

「はい、それじゃぁ失礼します」
「お袋、コンラッドのお袋さんなんだって?」
「はい、コンラッドくん、携帯・・・ええ、ホテルに一緒に泊まると仰ってたんだけど、そんな
の勿体無いから、うちにどうぞ、って」

コンラッドに携帯を返しながら、お袋が笑顔で答えた。

「な、コンラッド。言った通りになったろ?」
「でもご迷惑」
「迷惑なんて思わないわよ。パジャマは、しょーちゃんので我慢してもらって、
下着は買い置きがあるから大丈夫よ。寝る場所だって、客間が・・・」
「お袋!」
「なに?ゆーちゃん」
「寝る場所は、おれの部屋でいーじゃん」
お袋は瞬きをした。

「え、でも狭くないかしら?」
「布団敷くスペースはあるよ。コンラッドだって、客間なんかじゃ、遠慮しちゃうだろ」
「俺は、あの・・・どちらでも」
「そうねぇ・・・まぁ、一緒の部屋のほうが、寂しくないかしらね」
「さみしー・・・って、おれもコンラッドも子どもじゃないっての!」

すると、お袋はくすくす笑った。

「子どもよ。ママからみれば、あなた達まだまだ子ども。しょーちゃんだって、そうよ」
「ええー!大学生のショーリもかよ!」
「親にとっては、そうなの。じゃ、寝るところはゆーちゃんのお部屋ね。じゃ、ママ
お布団とか用意してくるから」
「あの、お手伝いします」
「コンラッドくんはゆーちゃんと一緒にテレビでも見てて」
申し出たコンラッドに、いいのいいの、と手を振って二階へと上がっていった。

April / 02 Wed 15:36 ×

ちらり、と目線を上げて前に座るコンラッドを見る。
湯気でくもって見にくいのか、コンラッドは頻繁に眼鏡を外し拭いては掛けて、を
繰り返している。
あれじゃぁ落ち着いて食べられないだろうなぁと思っていたら、
何度目かのとき、とうとう溜息をついて、眼鏡を外し、胸ポケットにしまってしまった。
前髪をうっとうしそうに耳に掛けると、普段は隠れているコンラッドの素顔が露わになった。

前に図書室で見たときも思ったけれど、本当にハンサムだ。
コンラッドのお袋さんの容姿からしてみれば、息子のコンラッドがハンサムなのは
当然なのかもしれない。
もっとも、コンラッドのお袋さんの方がもっと華があるんだけど・・・。
それなのに、本人に自覚がないのか、無頓着なのか知らないが、
今時めずらしい黒縁眼鏡をかけて、その上長い前髪で隠してしまっている。
きっと、クラスでコンラッドの素顔を知る人物なんて、そんなにいないんだろうと思う。

もったいないなぁ・・・と他人事ながら、思う。
せっかくハンサムなのに。
コンタクトにして、髪形を変えれば、モテると思う。
背は猫背だけど、高いし。性格も優しいし。
自分が女の子だったら、絶対に放っておかないと思う。

なので、前にアドバイスしようと思ったことがある。
・・・けれど、やめた。

別にコンラッドがモテるのが悔しいとか、そんなんじゃなくて。

コンラッドの素顔を知るのは、自分だけでいい。
そう強く思ったんだ。

だって、モテて彼女とかができたら・・・コンラッドは、もうおれの事なんか
すっかり忘れてしまうだろうから。

コンラッドは、ずっと、ずっとおれの幼馴染なんだ。
背がおれより大きくなって、声が大人になっても・・・コンラッドは・・・。
そんな事を考えていたら、

「先輩?どうしました?」
声を掛けられ、我に返った。

おれは、何でもない素振りで

「あ、いやなんでもない!コ、コンラッド、もっと食え!ほら!」
コンラッドの取り皿に具を次々入れた。
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