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じなん部屋
April / 29 Wed 13:31 ×
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January / 07 Mon 09:17 ×
お正月


お正月の朝。
お雑煮や御節を食べ終わり、しばらくしてコンラッドは立ち上がりました。

「コンラート?どうしたの」
「母上、ちょっと出かけてきます!」
「え、出かけるって、ひとりで?」
「はい、あの・・・どうしても、これを届けにいきたいんです」

コンラッドは、小さな両手でそれを持った。
コンラッドが、何をしたいのか理解した母は、にっこりと笑みを浮かべた。

「いいわよ、いってらっしゃい」
「すぐ、帰ってきます!」

ダッフルを着こんで、コンラッドは、走りました。
別に急いでいたわけじゃありません。
ただ、自然と足が走り出してしまうのです。

息を整えながら、ドアの前に立ち、背伸びをしてチャイムを押しました。
けれど、すぐに開くと思っていたドアは開くようすがありません。

コンラッドは、もう一度チャイムを鳴らしました。
しかし、ピンポーンという音が、虚しく響くだけです。

「お留守?」

そうか・・・お正月だから、せんせいだって自分のお家に帰っているのかもしれません。
初詣とか、旅行とか・・・出かけている可能性は物凄く高いのです。

コンラッドは、ここにくれば絶対にゆーりせんせいに会えると信じていたので、
会えない、という状況を考えなかったのです。

ただ、ただ会いたくて会いたくて、それだけでここまで来てしまいました。
一歩一歩、せんせいの家に近づくたびに膨らむ、会える!というわくわくした気持ちが
急速にしぼんでいきます。

コンラッドは息を吐き出しました。
手渡ししたくて持ってきた年賀状。
仕方がないので、郵便受けに入れておこうかと思いました。

そこへ、カンカンと階段を上ってくる足音がしました。
コンラッドは、反射的に振り返りました。
少しずつ見える黒い髪の毛。

「ゆーりせんせい!」
コンラッドは思わず声をあげました。

コンラッドの声に、一度足音が止まったかと思うと、
カッカッカッ、とスピードをあげて上ってくる足音がします。

「コンラッド?一体、どうし・・・」
「ゆーりせんせいっ」

コンラッドは、ゆーりせんせいに駆け寄りました。

「どうしたんだ?」
ゆーりせんせいは、すぐにしゃがんでコンラッドと視線を合わせてくれました。

「あの、あけましておめでとうございます!」
「ん、あけましておめでとう、コンラッド」
「俺、せんせいにこれを、渡したくて」

年賀状を差し出しました。
ゆーりせんせいは、少し驚いた顔をしながら、それを受け取りました。

「わざわざ届けに?どうもありがとう」
平仮名で、ゆーりせんせいと書いてある。
裏返すとペンで描かれたねずみらしき絵。
それとたどたどしく、けれどしっかりした文字で「あけましておめでとうございます」

ユーリは頬が緩むのを隠せなかった。

「よく書けてる。嬉しいよ、コンラッド」
ありがとう、そう言って抱きしめた。

「ゆーりせんせい」
ゆーりせんせいの手が、くしゃ、とコンラッドの髪を撫ぜ、顔を覗きこんできました。

「お正月、楽しんでるか?コンラッド」
「はい!父上も母上もいるので、楽しいです」
「そうか、よかったな・・・って、コンラッド、手が冷たい」
「あ、手袋してこなかったので」

そう答えると、ゆーりせんせいは、コンラッドの両手を手で包み込んで息を吹きかけて
くれました。
ふわ、と暖かくなる手。

「ありがとうございます」
「とりあえず、おいで」
ゆーりせんせいが、部屋の鍵を取り出し開けました。

せんせいのお家に来るのはクリスマス以来二度目です。
部屋はヒーターが付いていて暖かでした。

「急にみかんが食べたくなって、近所のスーパーに出かけてたんだ」
マフラーを外しながら、せんせいがそう教えてくれました。

「よかった、すぐに帰ってきて」
「ごめんなさい・・・俺、せんせいが出かけてるなんて、思わなくて」
「いいよ。だって、コンラッドはおれに会いに来てくれたんだろう?」

ゆーりせんせいは、にこ、と笑いコンラッドにみかんを手渡してくれました。

「はい、お年玉」
「あ、どうもありがとうございます!」

コンラッドは、両手でみかんを包み込んだ。
渡されたみかんは冷たかったけれど、でもコンラッドの心を暖かくしてくれました。

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December / 28 Fri 17:04 ×
体育祭の最中なので、校舎内は、物凄く静かだった。

「よし、着いた!せんせー、怪我人でっす」
ガラッと引き戸を開ける。

「あれ?先生?」
「いないみたいですね」
「そうだな。仕方ない、適当に湿布探して・・・えっと、とりあえず座れ、コンラ・・・わわっ!」
「先輩、あぶな・・・っ」

ガシャ、とユーリ先輩が丸椅子に蹴躓き、転ぶまいとバランスを取ろうとした彼と、
彼を支えようとした俺は、もつれるようにベッドの方へ進み、結果、
ドサッ、とベッドの上に二人して倒れこんでしまった。

「ッ・・・」
「コ、コンラッド!ごめんっ」

俺の上に倒れこんだ先輩は、慌てたように起き上がった。

「ほんと、ごめん!どっか痛くしなかったか!?」
「いえ、どこもなんともないですよ」

俺の言葉に彼は心の底から安心したような笑みを浮かべた。

「それなら、よかった~。じゃ、おれちょっと湿布探すから」
そして、ベッドから滑り降り、スタスタと薬品棚に歩いていってしまった。

一瞬だけ感じた彼の重み。
間近にあった、彼の唇。

危なく、キスしそうになった。
薄い背中を抱きしめて、離したくないと思ってしまった。

コンラッドは、ギュと目を閉じた。

「コンラッド、湿布あった・・・って、どうした?痛いのか!?」

ユーリは、キツク目を閉じたコンラッドにあわてて駆け寄った。

「あ・・・いえ、なんでもないです」
「ほんとか?嘘つくなよ?」
「嘘なんてついてません」

じ、と真っ黒な瞳に見つめられ、俺は小さく笑みを返した。

「本当に、大丈夫ですから」
「よし、わかった。じゃ、手当てするから」
「お願いします」

素足にピタリ、と湿布を貼られる。
その冷たさに、眉間に皺が寄る。

「冷たいけど我慢しろよなー」
そう言って、くるくると包帯を巻きつけていく。

「先輩、うまいですね」
「先輩言うなって。・・・まぁ草野球で、怪我する奴多いからな・・・はい、できた」
「ありがとうございます」
「どーいたしまして。んじゃ、戻ろうか」
「はい・・・って、先輩、自分の手当ては?」

言われて彼は、あ、という顔をした。

「あー・・・すっかり忘れてた。でもすり傷だから平気だよ」
「消毒だけでもしていきましょう」
「いいって」
「駄目ですよ」
断ろうとしたが、コンラッドの意外と力強い手が腕を掴み、
おれは、丸椅子に腰掛けさせられた。

シュッシュッと吹きかけられる消毒液。

「くー・・・」
「染みますか?」

おれの前に跪いたコンラッドが、息を吹きかける。
膝の周辺にやわらかな息がかかる。
脚に触れる、大きな手。
前髪で隠れて見えない、コンラッドの表情。

「や・・・コンラッド・・・ッ」
「先輩?」

コンラッドが、少し驚いたように顔をあげた。

「あ、いや・・・もういいから!」
おれは、逃れるように椅子を後ろに引き距離を取った。
なぜ、こんな風に慌てた行動を取ってしまったのかわからない。
心臓が、不自然なくらい大きく脈打っている。

「サッ、サンキューな」
「はぁ・・・あの、大丈夫ですか」
立ち上がったコンラッドに笑いかける。

「ん、もう平気だって!さ、本当いい加減戻らないと」
「そうですね・・・どこの組が勝ってるでしょうか」
コンラッドが、窓から校庭を眺める。

「うちの学年は、さっきまでうちのクラスだったけどなー」
「うちは・・・確か2位でした」
「そっか。優勝目指してがんばろうな」

静かな廊下を二人並んで校庭へ戻る。
そっと、自分より高い位置にあるコンラッドの横顔を見た。
コンラッドは、ユーリの視線に気づくことなく歩いている。

さっき、コンラッドが触れていた箇所が、まだ熱い気がした。
December / 25 Tue 00:06 ×
クリスマス 3

夕方、ゆーりせんせいは家のすぐ側まで送ってくれました。
「せんせい、今日はありがとうございました」
「どういたしまして。それじゃ、また明日幼稚園で」
「はい。また、明日」

せんせいに、手を振ってコンラッドは家に戻りました。
今日はとても楽しい日でした。
大好きなゆーりせんせいを一日独り占めできたのです。

首から下げた鍵を取り出し、鍵穴に差込み捻ろうとすると、なんとドアが、カチャと音を立てました。

「え?」
コンラッドは、少し驚いて一歩下がりました。
すると、ドアが大きく開きました。

「おかえりなさい!コンラート!」
むぎゅ、と突然抱きしめられてしまいました。

「は、母上!?」
「そうよ」
「どうして?」
いつもなら、まだ帰ってくる時間ではありません。

「どうしてって、クリスマスだからよ」
優しい手が、いい子いい子と頭を撫でてくれました。

「さ、部屋に行きましょう」
もっと、驚くことがあるわよ、と母上はお茶目に片目をつぶりました。
背中を押されてリビングに行くとなんと冒険家の父上がそこにいました。
コンラッドは目を見張りました。

「父上!」
「おかえり、コンラート」
しばらく見ないうちに、また大きくなったな、と笑顔でコンラッドを抱き上げました。

クリスマスだから一緒に過ごそうと思って二人とも、帰ってきてくれたというのです。

その時、コンラッドは、ゆーりせんせいの言葉を思い出しました。
『家に帰ったら、もっと楽しいことが待っているよ』
せんせいは、確かにそう言いました。
その時、コンラッドは、今以上楽しいことなどあるはずないと思っていましたが、
せんせいの言ったとおりになりました。

ゆーりせんせいの言うとおりになった!
すごい!

コンラッドは、嬉しくて嬉しくて、父上の首にしがみ付きました。

それから、ゆーりせんせいと一緒につくったケーキを親子3人で食べました。
父上も母上も手作りのケーキを美味しいと喜んでくれました。
たくさん話をしたり、ゲームをしたりして過ごしました。

そして、コンラッドはいつの間にか、眠ってしまいました。
夢の中で、コンラッドはサンタの格好をしたゆーりせんせいに会いました。

ゆーりせんせいは、サンタクロースでも、不思議はないと、夢の中で思いました。
とても幸せな一日でした。

December / 23 Sun 15:35 ×
クリスマス 2

「ゆーりせんせい、あの・・・ケーキは・・・?」
街角にはいろいろなケーキ屋さんが、お店を出しています。
しかし、ゆーりせんせいは、どの店も見向きもしないで歩いていってしまいます。

コンラッドは少し焦りました。
ゆーりせんせい、ケーキは買わないのだろうか・・・。
そんな事を思っていたら、ゆーりせんせいが、コンラッドの顔を覗きこんできました。

「ケーキはね、作ろうと思ってるんだ」
コンラッド作ったことあるか?

「ないです。ケーキ、つくるんですか!?」
コンラッドは、目を丸くしてゆーりせんせいを見た。
知らなかった。
ケーキは普通の家でも作れるんだ。

「うん、作れるよ。だから、その材料を買って帰ろう」
「はい!」
コンラッドは、急にわくわく気分になりました。

ゆーりせんせいは、幼稚園の近所のアパートにひとりで暮らしていました。

早速、台所でケーキ作りです。

「んー・・・おれも久しぶりに作るからな・・・」
料理の本をじっくり読んでいます。

「よし、じゃ作るぞ。コンラッドも手伝いよろしくな!」
「はい、がんばります!」
コンラッドは、家から持ってきたエプロンをつけました。
ゆーりせんせいは、幼稚園の時とは違う、黒色のエプロンです。
いつものヒヨコさんのエプロンもいいですが、この黒いエプロンもせんせいに良く似合うと
思いました。

「まずは、材料の重さをはかって・・・」

ケーキ作りの始まりです。
コンラッドも、せんせいに教わりながら、手伝いました。

「ケーキづくりで、何が一番心配かっていうと、やっぱりスポンジがうまく膨らむかどうかだよな」
ゆーりせんせいが、そう言いながら、オーブンを見つめています。
コンラッドも同じように、じーっ、とオーブンの中のスポンジを見つめながら、こくん、と頷きました。

「あ!ゆーりせんせい、膨らんできましたよっ!」
「どれ・・・ほんとうだ、よかったな!コンラッド」
「はい!」

チン!とタイマーの切れる音がしたので、ゆーりせんせいはオーブンを開けました。

ふわ、と湯気とともに甘い香りがしました。
スポンジだけでも食べてしまいたくなりました。

「いいにおいですね」
「そうだな。それじゃ、これに生クリームを塗って、フルーツを飾れば完成だ」
スポンジ全体にクリームを塗りつけるのはせんせいにお願いして、コンラッドは
主にフルーツを飾り付けるのを手伝いました。

真剣な顔でフルーツを飾っていくコンラッドをユーリは微笑ましい気持ちで見ていました。
コンラッドは、同年代の子たちと比べると大人びていますが、こういう姿を見ると、
やはり、他の子達と変わらないのだと思います。

幼稚園に通い始めた頃は、どこか周りと線を引いているようなところがありました。
けれど今ではけっこう皆と一緒に遊び笑ったりしています。

ユーリは、もっともっとコンラッドに楽しい思い出を作ってほしいと思いました。

「せんせい、できましたっ」
「あ、綺麗に出来たな、コンラッド」

ユーリは柔らかなコンラッドの髪を撫ぜました。

「それじゃ、テーブル片付けて、クリスマスパーティーをしよう」

コンラッドは、大きく頷きました。

そして、二人きりのクリスマスパーティーがはじまりました。
二人で作ったケーキや、スパゲッティやチキンを食べ、歌を歌いました。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、夕方になりました。


December / 19 Wed 11:30 ×
てくてくてく・・・

今日もいつもと同じ通学路。

チリン、とベルの鳴る音が聞えたので視線を上げると
あの歯医者さんから出てくる女性がいた。
どうやら、ドアにつけられたクリスマスリースのベルが音を立てたらしい。

「よかった。診察受けるひといて」
なんとなく、ユーリはホッとした。
開業したばかりなのに、誰も診察を受けに来なかったら、なんだか気の毒だと思っていたのだ。

「ありがとうございました」
「いえ。それじゃぁ、また来週」

歯科医の姿は残念ながら、ユーリのところからドアが邪魔で見えなかったが、声からすると男性のようだ。

「なんだ、男の先生なんだ」
もしかしたら、美人の女医さんかも!と内心わくわくしていたのに、期待が外れてしまった。

「どんな先生なんだろ」
しかし、メッセージボードに『見学だけでも大歓迎!』なんて書く歯科医のことが、急に気になりはじめた。

「それじゃ、さようなら」
「お大事に。さようなら」

あああ、ドア閉まっちゃうよ!
ドアが閉まったら、顔見れない!

ユーリは何故か焦った。

後で考えると、別に歯科医の顔などどうでもよかったはずなのに、何故かこの時ユーリは走ってしまった。

けれど、焦って走る必要はなく、歯科医はそのまま外に出てきた。

「あ、外に出てきた!」

長身にダークブラウンの髪。
顔はよくわからない。

歯科医は、外に出て例のメッセージボードの位置を直していた。

そして、走ってくる足音に気づいて、歯科医がこちらを振り向いた。

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